砂鉄と磁石

むかしむかし、といってもそう遠くないむかし(笑)

ある小国の王がいました。

 

 

王はもっと国を大きくしたかったので、民にたくさん働いてもらってもっと税金を納めてもらおうとしました。

この王は悪い王だったので、自分のふところにお金が入ることしか考えていませんでした。

 

王の願いは叶って、小国はどんどん大きくなり、民もたくさん増えました。

 

でも、国が豊かになると今度は、働かずに自堕落に過ごす者が出て来たり、役にたたない民も大勢出て来ました。

そのうち民はどんどん増えて、国を納めるのが大変になってきました。

 

そこで王は薬屋と悪だくみをしました。

ありもしない熱病が隣国からやってきたと民にふれ回し、薬屋が作った薬を飲めば治ると流布しました。

 

怖がった民は王が用意した薬がどんなものかもしらずに群がりました。

王はその薬をタダで民に配ったのです。

 

最初、国のほとんどの民が熱病を恐れ、王の元にやってきて、その薬をほしがりました。

だけど、ほんの少しの民は始めからその薬の列には並びませんでした。

なぜなら、王が悪い王だと知っていたからです。

 

 

さて、この薬にはなんとも信じられないことに、民を殺すための薬が混じっていました。

王はこの薬を飲ませて、増えすぎた民を減らしたかったのです。

 

この薬は飲んでもすぐには死にませんでした。

なぜなら、すぐに死んでしまったら、王と薬屋の悪事がバレて誰もその薬を飲まなくなってしまうからです。

 

王と薬屋は話し合って、2年たったら段々と死んていくようにその薬を作りました。

 

そして王はもう一つ悪いことを考えていました。

 

それは何か?というと、自分の頭で考えないバカな国民だけ死んでもらって、優秀な民には死なずに残ってもらい、これまで通り働いて税金を納めてもらおうと考えていたのです。

 

 

自分の頭で考えない民は、王の言うことを信じて、王が差し出す薬を何度でも何度でも飲みました。

 

王は民全体にあたかも今すぐそこまで熱病が来ているかのようにふれまわりました。

だけど、実際に熱病で死んだ人を見た民は誰もいませんでした。

それでも、恐怖をあおられた民は目に見えない熱病が恐ろしくて、何度も何度も薬を飲みました。

家にその薬をずっと置いておきたいと希望する民まで現れました。

そのうち、薬を奪い合う民まで現れました。

 

 

さて、この薬は2年したら死んでしまうように作られた薬でしたが、どうやら飲んですぐに死んでしまう人も出て来ました。

 

最初から王のことを信じていなかった民だけでなく、王のことを信じない民も現れました。

 

『熱病は嘘だ。わたしは熱病で死んだ人を誰も見ていない。』

 

そうやって言う人が増えたのです。

 

 

でも、熱病を恐れた民はそれを信じませんでした。

そしてそれまで以上に薬を欲しがりました。

 

 

やがて、王の嘘を見抜いて信じない民と、王の言いなりになって薬を欲しがる民にはっきりと分かれてしまいました。

 

王はそれを見て、『わたしの計画したとおりだ。』と人知れず笑いました。

 

自分の頭で考え、自分の感覚を信じる民と、恐怖に打ち震え、人の言いなりになる民がまるで、砂鉄を磁石で引き寄せるようにぱっかりと分かれたのです。

 

 

やがて月日は経ち、薬を飲んだ者はどんどん死んで行きました。

途中で気がついた薬を飲んだ民もいたけれども、もうどうすることも出来ませんでした。

 

 

さて、王が望んだように賢い民だけが国に残りました、

 

残った国はその後どうなったのでしょうか?

 

王は最後は賢い民によって国から追放されました。

だれも王の言うことを聞く者がいなくなったからです。

 

賢い民は国に王をおかずに、自分たちの新しい生活を作り出しました。

助け合って思いやりあう世界に王はいらないのだと賢い民は知っていました。

 

そしてその後その土地は何年も何百年も栄え、続いたのでした。

 

 

終わり

 

 

 

 

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